せかいで いちばん すきな 耳
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せかいで いちばん すきな 耳

My Favorite Ear in the Whole World

ここまで むりょう・7場面

ねこの いる お店。ガラスの むこうで、子ねこたちが ころころ あそんでいます。みんな、げんき。みんな、かわいい。でも、いちばん おくに、一ぴきだけ。かた耳が、ぺたんと 折れた、小さな ねこ。だれも、ゆびを ささない。だれにも、えらばれない。

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リクは、その ねこから、目が はなせませんでした。「……きみも、なんだね。」リクも、いつも そう。かけっこも、なわとびも、さいごまで のこる子。「いっしょに やろう」って、なかなか いってもらえない子。リクは、しゃがんで、ガラスに そっと 手を あてました。ねこも、おなじ ところに、小さな 手を のせました。

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「この子が いい。」リクは いいました。お母さんが、「ほかの子も、かわいいよ?」と いっても。「ううん。この、耳の子が いい。」だっこすると、ねこは、ごろごろ のどを ならしました。あったかい。リクは、折れた耳に、そっと ほっぺたを よせました。「きみの その耳、すきだなあ。」

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ソラ、と なまえを つけました。おうちで、ソラは リクの あとを、どこまでも ついてきます。「ソラの 耳はね、みんなと ちがうから、すぐ きみだって わかるんだ。」たくさんの ねこの 中でも、ぜったいに 見つけられる。リクは、その 折れた耳が、せかいで いちばん、すきでした。

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ある日、こうえんに ソラを つれて いきました。すると、子どもたちが あつまってきて――「うわ、この ねこ、耳 へんなの。」「びょうき?」「かたっぽ おかしいよ。」くすくす。わらいごえ。ソラは、リクの うしろに、小さく かくれました。リクの むねが、ぎゅっと なりました。その わらいかた、しってる。

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リクは、思いだしました。ソラは いちども、リクに 「ふつうに なって」なんて、いわなかった。さいごまで のこっても、うまく できなくても、ソラは ただ、リクの となりに いてくれた。手の 中で、折れた耳が、ぽかぽか あたたかい。むかし、だれかに いってほしかった ことばが、リクの のどまで、こみあげてきました。

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子どもたちは、まだ こっちを 見て、わらっています。ソラが、リクの うでの 中で、ふるえています。リクの 心ぞうも、どきどき。「ふつうだよ」って いえば、きっと、わらわれない。でも――ソラの 耳は、リクが せかいで いちばん すきな ものなのに。みんなが 見ている。リクは、どうする?

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