
はじめての こえ
The First Voice
無料会員作品・7場面
おまつりから かえった よる。まどの そとから、小さな こえが きこえました。「いっしょに……」。ひるま、ノノも おどりの わに 入りたくて、いいたかった ことばと おなじ。「……いまの、だれ?」そとは、くらやみ。こえだけが、ぽつんと のこって います。

まどを あけると、そこに いたのは、雨に ぬれた、瑠璃色の とり。ノノは、びっくりさせない ように、すこし はなして、かわいた ぬのと、水を おきました。じっと まって いると——とりの ほうから、ちょん、と 一歩。ノノの ゆびの ちかくまで、きて くれました。

雲が きれて、月あかりが、とりの はねに さしました。とりが、もう 一歩。すると、こえの つづきが、きこえました。「いっしょに……おどりたい」。ノノは、そっと。「きこえた?」とりが、こたえます。「るるっ。」ノノは、とりを ルリと よびました。ふたりで——「とどけに いこう。」

ノノは、おうちの 人の ところへ いきました。むねが、どきどき。でも——「もういちど、おまつりへ いきたい。」小さいけれど、いえた。はじめて、じぶんから。おうちの 人は、うなずいて、かさを とりました。ふたりと 一わで、あかりの みちを、また あるいて いきます。

おまつりの わから すこし はなれた、とうろうの かげ。おうちの 人の そばに、おなじ としごろの 子が いました。足は、おんがくに あわせて、とんとん。でも、わの 中には 入れない。その 子を 見て、ノノは、はっと しました。ひるまの じぶんと、そっくり だったから。

さいごの 一きょくが、はじまりました。とうろうの 子は、かえろうと、くるり、せなかを むけます。ノノも、のどが きゅっと なって、こえが 出ない。そのとき、ルリが、ふわり。ノノと、その 子の あいだに おりて——ただ、まって います。せかさず、しずかに。

わの 中に、ひとり分の ばしょが あいて います。ことばで「いっしょに」と さそう? それとも、ことばは いそがず、ばしょを あけて まつ? ノノの むねには、ひるまの じぶんと おなじ、「いえない」気もちが うつって います。——ノノは、どうする?

あなたなら、どうする?
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