ひとりでに鳴るピアノ
えらんで すすむ お話

ひとりでに鳴るピアノ

こわいの、しょうたい。第1話

むりょう・12場面

「ねえ、しってる? 音楽室のピアノ、ひとりでに鳴るんだって」。朝の教室は、そのうわさでもちきりだった。だれもいないはずの放課後に、ぽーん、と一音。聞いた人は——そこから先は、みんな声をひそめる。コンクールまで、あと三日。合唱部は、こわくて音楽室に入れないでいる。こわがりのモモが、ふるえる手で、一冊のノートをきみの机に置いた。「きみ。けんしょうノートの、出番だよ」

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けんしょうノートは、モモときみの宝物だ。こわいうわさを聞くたび、たしかめたことを書きためてきた。「よお! 今回のは、でかいぞ」。レンが教室に飛びこんでくる。こわいものなしで、たよりになる。ただし——答えを決めるのが、はやすぎる。「どうせ風だろ、風」。モモが首をふった。「決めつけは、だめ。まず、聞いた人をさがそう」

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聞いた人は、三人見つかった。用務員さん。「戸じまりの見回りのとき、ろうかの窓ぎわで、ぽーんと」。吹奏楽部の先輩。「片づけのころ。夕やけチャイムと、かさなるみたいに」。図書委員の子。「本を返しに通ったら、窓側のろうかで。……五時すぎ、だったと思う」。三つの声を、ノートに書きとめる。ばらばらに見えて——どこかが、そろっている。

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モモが校舎の地図をひらいて、三人の証言を書きうつした。用務員さんは、五時の見回りのとき。先輩は、夕やけチャイムのころ。図書委員の子は、五時すぎ。——時間が、そろってる。それから、場所。三人とも、聞いたのは「窓側」だ。裏道に面した、あの窓側。モモが顔を上げた。「うわさには、条件があった。条件があるなら——正体が、あるんだよ」

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五時前。用務員さんに立ち会ってもらって、夕やけの音楽室へ。ならんだ譜面台。ふたの開いたグランドピアノ。モモの懐中電灯の輪が、ふるふるとゆれる。「風だな! 窓を閉めれば、かいけつ!」レンが窓へ突進する——「まって」。モモが小さく、でも、はっきり言った。「けんしょうの前に勝手に変えたら、なにがきいたのか、わからなくなるよ」。まずは、なにもさわらずに、その瞬間を待つ。

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五時すぎ。遠くで夕やけチャイムが鳴りおわった——そのときだった。窓ガラスが、ビリビリッとふるえた。同時に、わおん、と、ピアノが鳴った。だれも、さわっていないのに。「ひっ」としゃがんだモモが、ふるえる指で、窓の外をさす。校舎の裏道を、市場帰りの大きなトラックが、ゆっくり通りすぎていくところだった。窓が、ふるえた。ピアノが、鳴った。——同じ、瞬間に。

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ノートに、わかったことをならべる。大きなトラックが通ると、じめんは、かすかにふるえる。ふるえは、じめんから床へ、床からピアノの足へ、つたわっていく。ピアノの弦は、ぴんと張った糸だ。ふるえが届けば——さわらなくても、鳴る。トラックが通ると窓がビリビリ鳴る、あれと同じしくみ。……たぶん。この「たぶん」を、「そうだった」に変えるには?

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市場帰りのトラックが裏道を通るのは、平日の夕方、一日に一度きり。コンクールまで、のこり二日。たしかめられるチャンスは、もう多くない。「一度に変えていいのは、ひとつだけ、だよね」。モモがトランシーバーをにぎって、ろうかの安全ラインからささやいた。「きみ、けんしょう、おねがい。……はやくして」。なにをどう試すかは、きみが決める。

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トラックの瞬間・一変数けんしょう

一つずつ変えて、鳴るかどうかをたしかめよう

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条件カードを一枚ずつ実行して、トラックが通る瞬間にピアノが鳴るかを見よう。

けんしょうノートに、試せることが三つ、ならんでいる。窓。ろうかのドア。そして、ピアノの足の下。一つずつ変えて、トラックが通る瞬間をたしかめよう。ぜんぶ試したら——しょうたいを、指させ。

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