
さいごの ひとくち
The Last Sip
むりょう・7場面
かどの おうちの はかせは、ふしぎな きかいを つくる めいじんです。きょうの きかいは、とびらの かたち。「これは『せかいめぐりの ゲート』。ダイヤルを まわせば、うみでも やまでも、すきな せかいへ いけるんじゃ」。コタと ネネの 目が、きらきら。つくえの 上では、しろい ねこが、みずの コップの よこで ひるねを して います。

その とき。ねこが、のびを して——ぴょん! コップが かたむき、みずが ざばっ。きかいの ばんに かかって、バチバチ バチッ! ダイヤルが ひとりでに ぐるぐる まわりだし、ゲートが まぶしく ひかります。「わわわっ!?」 つよい かぜが ふたりを すいこんで——ダイヤルの つまみが、ぽーん と とんで いきました。

しりもちを ついて、目を あけると——そこは、どこまでも どこまでも つづく、きんいろの すなの うみ。うしろには、ゲートが ぽつんと たって います。でも、ばんは まっくろに こげて、うんとも すんとも いいません。「……ネネ、ここ、どこ?」 なつの Tシャツの せなかに、おひさまが じりじりと ささります。

そらには、くもが ひとつも ありません。おひさまだけが、ぎらぎら、ぎらぎら。いきを すうだけで、のどが かわいて いきます。あせは でるのに、かぜは ふきません。ふいに、コタの あたまが、くらり。——それが「あつすぎる」の からだの サインだと、ふたりは まだ しりません。

「あ! あれ!」 ゆらゆらの かげろうの むこう、とおい すなやまの てっぺんで、なにかが きらり。とんで いった、ダイヤルの つまみです。あれが ないと、かえれません。ふたりは まず、大きな 岩の かげで ひとやすみ。すなに はんぶん うまった ふるい すいとうに、岩の われめの みず——ぽたり……ぽたり……——を、すこしずつ、すこしずつ、ためました。

ゆうがたを まって、すなやまを のぼります。でも、のぼっても のぼっても、すなは ずるずる。つぎの おひるが きて、ひざしが いちばん つよく なった とき——ネネの あしが、ふらり。あたまが、ゆらゆら。あの サインです。コタが すいとうを ふると、ちゃぽん。……さいごの ひとくちだけ。

ふるえる 手の なかの、すいとう。コタの のども、カラカラです。ネネが すなに すわりこんで、ちいさく わらって みせました。だいじょうぶじゃ ないのに。きらり と ひかる つまみは、もう すぐ そこ。さいごの ひとくちを、ネネに あげる? じぶんが のんで、ネネを ささえる ちからを まもる? コタは、どうする?

あなたなら、どうする?
タップして えらぶ